SEASTAR漁業情報サービス 理論・用語の解説|海商株式会社

Red Tide

理論・用語の解説

変温層 (水温躍層)(Thermocline) / 海面高(SSH)図解

 「変温層(水温躍層)」とは、大きく異なる水温を持つ2つの水塊が接する部分の、急激に水温が上下する海域で、上層に暖水を持つもののことです。通常、変温層の下にある海水は濃度の高い栄養分(植物の成長のためのビタミン)を備えています。
 動物プランクトン、餌、マグロ等の魚類は変温層(水温躍層)よりやや上部に集中する傾向があります。変温層(水温躍層)が海面に非常に近いときに、魚群探査地図(FFM)上にプランクトンが高く集中しているゾーンが見られます。マグロ等の魚類はしばしば、このような海域付近にある透明な海水域に集中しています。
 「変温層(水温躍層)水深情報」はこの「変温層(水温躍層)」の水深情報を提供します。プランクトン濃度分布情報等の他の情報を組み合わせることで漁場を絞り込むことが可能です。延縄漁業・トロール漁業等の中層魚を対象とする漁業の場合は操業位置、対象魚種を考慮した上で、変温層の水深に応じて「釣り針」の深さ(操業水深)を設定することが望ましいといえます。まき網漁業・竿釣り漁業等の表面魚を対象とする漁業の場合は浅い変温層がしばしば魚群を海表面近くに押し上げ集中させます。




変温層 (水温躍層)(Thermocline) / 海面高(SSH)図解

 海面が基準海面より高い、または低い場所では、中層変温層(水温躍層)(Thermocline)の移動が大きく反対方向に生じます。約1cmの海面高の変化は約10mの変温層(Thermocline)深さの変化を引き起こします。海面高(SSH)が高い(赤色及び黄色)場合は変温層はより深く、海面高(SSH)が低い(青色及び水色)場合は変温層はより浅く、海表面に接近します。このイメージでは、東側では低い海面高(SSH)がどれだけ変温層を海表面側に引き上げているか、西側では高い海面高(SSH)がどれだけ変温層をより深く押し下げているかが分かります。




略語及び固有名称

AVHRR超高解像度ラジオメーター(Advanced Very High Resolution Radiometer);NOAA気象衛星に搭載された装置で、地表の温度を測定するもの。
FAD魚群収集装置(Fish Aggregating Device);浮標、浮き台、丸太、難破船等。
FFM魚群探査地図(Fish Finding Map);MAXAR独自のもの
NASA米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration )
NOAA米国海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration);米国務省の機関
OrbView-2SeaWiFSセンサーを搭載した人工衛星の名称;GeoEyeが所有・運営。2010年12月運用終了
OrbView-3モノクロで1m、カラーで4mの解像度での撮影が可能な人工衛星の名称。GeoEyeが所有・運営。2007年4月運用終了
WorldView-4
(OrbView-4)
34cmの解像度での撮影が可能な人工衛星の名称。 DigitalGlobe社が所有・運営。
SeaWiFS海上観測用広域センサー;地球を6つの異なる可視色と2つの近似赤外線波長で観測するOrbView-2人工衛星に搭載された装置。
SSH海面高(Sea Surface Height)
SSS海面下温度(Sea Sub-Surface Temperature)
SST海面温度(Sea Surface Temperature)

SeaStar漁業情報サービス

 Maxar社が提供する漁業者および海洋関係者へ提供する海洋気象情報を配信するサービス。前身はORBIMAGE社が提供。ORBIMAGE社がスペースイメージング社が合併後に社名はGeoEye社へ変更。後にGeoEye社とDigital Globe社がが合併し社名をDigitalGlobe社へ変更。更にMDA社とDigitalGlobe社の合併によりMaxar Technologiesへ変更という経緯を経て現在に至ります。


バシメトリー

 水平の海流及び湧昇や沈降流のような縦の海流の両方に影響を与える海山や海溝のような地形を持った海底のこと。


循環

 海盆周辺の水平な海流の動きの大規模で典型的な速度と方向。


海流

 水平な海水の流れ。通常、特定の場所における速度と方向で示される。持続的な海流が存在する場所では、例えば、「メキシコ湾流」のような名称を持つ。これらは海洋の「川」とみなされる。陸を吹く風と同様、海洋の海流は短時間規模(1時間毎、1日毎)から長時間規模(季節毎、年毎)まで様々なものがある。


エルニーニョ

 東太平洋から南米の西海岸に至るまでの周期的な温暖化で、気候のパターンに大きな変化をもたらすもの。温暖な赤道の海水が流れ込み、フンボルト海流の冷たい海水と入れ替わるときに起こる現象で、栄養分に乏しい海水が湧昇するため生産性が減少する。


食物連鎖

 第1生産者(植物)から頂点の捕食動物(動物)に至るまでのエネルギー移動を表した連鎖のこと。この連鎖には長いもの(人間がマグロを食べ、マグロが小魚を食べ、小魚が小エビを食べ、小エビが微生物を食べ、微生物が微視植物を食べる)もあれば、短いもの(鯨がオキアミを食べ、オキアミが微視植物を食べる)もある。


栄養分

 水植物の成長に必要な水中に溶解した成分のこと。「植物のビタミン」または養分とみなされる。


プランクトン

 主要な海流よって移動する、受動的な浮流性の水中生物(語源はギリシャ語の「流浪する」)。多くのプランクトンは砂粒大または、それよりも小さく、植物性(植物プランクトン)または動物性(動物プランクトン)である。


植物プランクトン

 自らの食物を日光と栄養分から生成できる。受動的に浮流する植物。通常は単細胞で微小なもの。ほとんどが光合成に必要な「クロロフィル」と呼ばれる緑色の色素を含んでいる。OrbView-2人工衛星は、植物プランクトン中のクロロフィルを直接測定する。


動物プランクトン

 生存のために他の生物を常食とする、受動的な浮流性の水中動物。微生物、エビや魚の幼生、クラゲなどの大型動物が含まれる。


変温層

 海水温度が、温暖な海面付近の平均水温から、冷却された深海の平均水温まで急激に下落する狭くて深い水域のこと。水塊間の境界は風、太陽、水面下の海水のような海面の作用によって、大きく影響される。


湧昇

 深海の冷たい、栄養分が豊富な海水が海面まで移動すること。沈降流の逆。植物の成長に必要な栄養分を日光が享受できる場所まで運ぶうえで重要。


異常波(巨大波)

 波高が有義波高の2倍以上に達する波。海洋で発生する波は様々な周期・位相を持ち、それらがそれぞれの波を相殺されるために異常波が発生する可能性は低い。但し、稀に複数の波の周期・位相が一致した場合に有義波の2倍以上の波が発生することがある。


溶存酸素

 溶存酸素(DO)は、水に溶けている酸素の量、つまり生きている水生生物が利用できる酸素の量の指標です。溶存酸素は、魚類、無脊椎動物、植物など多くの生物にとって必要なものです。これらの生物は、陸上の生物と同じように酸素を使って呼吸しています。水中の酸素濃度が低すぎると、魚やその他の動物は窒息して死んでしまうことがあります。溶存酸素量が2mg/L以下の海域を低酸素海域と呼びます。ほとんどの魚は低酸素海域では生きられないため、これらの海域はしばしば「デッドゾーン」と呼ばれます。


前線強度

 海洋前線とは、温度、塩分、栄養分などの性質が異なる水塊を隔てる比較的狭い海域です。それらはほとんどの場合、比較的短い距離での水の性質の変化の増大と関連しています。前線強度は、あるパラメータに対する前線の強さを示します。ある地域で正面強度が強い場合、それは測定されたパラメータの変動が他の地域よりも速いか劇的であることを意味します。言い換えれば、前線強度が高い海域は、海域内での変化がより強いということです。


FSLE

 FSLEとは、Finite Size Lyapunov Exponents(有限サイズのリアプノフ指数)の略です。移流による水塊の水平方向の伸びや分散、水流による輸送を数値化したものです。FSLEの値が大きいほど、海流による伸縮が強い領域であることを示します。
 例えば、強いFSLEの領域では、部分的な粒子が一時期に大きな距離を移動できることを意味し、一方で、弱いFSLEの領域では、粒子は基本的に同じ場所または近くに留まります。
 海洋では、FSLE前線と、クロロフィル前線、海面水温前線などの他の前線が、しばしば一致しています。 また、強いFSLEは水中のバリアーとしても機能します。 魚や流出した油などの粒子は、強いFSLEの障壁を越えることができない。もし、強いFSLEの円の中に閉じ込められてしまうと、そこに長く留まってしまいます。


一時生産

 一次生産量(pp)は、生物、主に植物プランクトンによって取り込まれた太陽光に含まれるエネルギー量を測定する変数です。つまり、魚を支える食物連鎖の第一歩となる、海中の植物プランクトンの豊富さを示す指標です。植物プランクトンの量が多いほど、漁業生産量も多くなる可能性が高い。外洋のほとんどの海域では、植物プランクトンが成長するために必要な栄養分の供給が制限されているため、一次生産量は低い。生産性の高い場所は、深海の湧昇や河川の流入などの要因で栄養源が得られる場所である。